従業員のパフォーマンスを左右する6つの動機
●楽しみ(play)が動機の人は、その仕事自体が楽しいから働いている。これを動機とする教師ならば、教育・指導の核となる諸活動を楽しんでいる。指導計画の立案、テストの採点、1人ひとりの生徒と絆をつくる方法の検討などだ。楽しみとは学習本能であり、好奇心、実験精神、難題への挑戦意欲と関わりがある。
●意義(purpose)が動機の人は、仕事の直接的な成果と自分のアイデンティティが一致している。働く理由は、その仕事が生むインパクト(社会的貢献)に価値を感じるからだ。たとえば意義に衝き動かされている教師は、子供を教育して力を与えるという目標に価値を感じ、自身を捧げる。
●可能性(potential)が動機の人は、仕事の成果が自分にプラスとなる、換言すると、仕事によってみずからのポテンシャルを高めるために働いている。可能性を動機とする教師は、いつの日か校長になりたくてその仕事をしているのかもしれない。
上記3つの動機は、何らかの形で仕事内容と直接関わりがあるため、「直接的な動機」といえる。これらは多かれ少なかれ、パフォーマンスのレベルを引き上げる。しかし、以下の「間接的な動機」はパフォーマンスを損ねる傾向にある。
●感情的圧力(emotional pressure)が動機の人は、外部からの力によってアイデンティティが脅かされているために働く。大切な人に対し、その罪悪感につけ込んで何かを無理強いしたことはないだろうか。それが、感情的な圧力を与えるということだ。恐怖、同調圧力、恥などは、いずれも感情的圧力の一種である。「自分自身や他者の期待を裏切らないため」に何かをする時は、感情的圧力に動かされている。これは、仕事内容とまったく関係ない動機である。
●経済的圧力(economic pressure)も、外発的な要因である。報酬を得る、または処罰を逃れるために働く場合だ。仕事内容にも自身のアイデンティティにも結びつかない動機である。
●惰性(inertia)で働いている人は、動機が仕事内容および自身のアイデンティティと完全に乖離しており、働いている理由さえもわからない。「なぜいまの仕事をしているのですか」と尋ねて、「さあね、昨日もその前もやっていたからだよ」という答えが返ってきたら、まさに惰性の証しだ。それでも仕事を続けているのだから、惰性も動機の1つではある。しかしそうする理由が説明できないのだ。